インターナショナル・ハイドンターゲ95

 

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 1995年9月7日から18日までの12日間、オーストリアのアイゼンシュタットで、フィッシャーさんが音楽監督を務めるインターナショナル・ハイドンターゲ95が開催されました。これはその音楽祭の特集レポートです。

bulletハイドン・オペラ「オルランド・パラディノ」
bullet「オルランド・パラディノ」レビュー
bulletフィッシャーさんのコメント
bullet釜洞祐子さん、金子みゆきさんインタビュー
bulletハイドンフィル・コンサート

オペラ「オルランド・パラディノ」

 今年のハイライトは何と言っても、フィッシャーさんが芸術監督を務め、ハイドンフィルハーモニーが伴奏をするハイドンのヒロイック・コミカルオペラ、「オルランド・パラディノ」でした。このオペラは1782年に初演され、ハイドンの存命中にはブラハ、ウイーン、ブダベストなどヨーロッバ各地で上演されました。登場人物も少ない小規模の作品なので、初演から200年以上経過した現在では、あまり上演されていませんが、久々の上演ということで、音楽史上でも非常に貴重です。

あらすじ(カッコ内は今回演出の特徴)

第一幕
 農夫リコーネ(かかしの衣装を着ている)の娘ユーリラの仕事は、ババリアの王ロドモンテの到来ににより妨げられます。彼は愛しの人アンジェリカの消息を教えるよう、人々を脅します。若者メドーロを愛しているアンジェリカは、彼女に横恋慕して追いかけているオルランドを恐れています。魔法使いのアルツィーナが現れ、魔法の力を見せつけて、アンジェリカを保護することを約束します。メドーロはオルランドがやって来るのを見ました。アンジェリカは、二人を守るためにメドーロに逃げるように進めますが、メドーロはどうして良いかかわかりません。

 騎士オルランドの従者パスクアーレが(大きな剣を持って)登場し、仕事はとてもたくさんあるが食べ物はほんの少ししかないと嘆きます。馬に乗った(ふりをした)ロドモンテが現れ、パスクアーレに決闘を挑みますが、パスクアーレは騎士らしくない拳闘ならばやっても良いと言います。ユーリラが二人の間に割って入りると、パスクアーレは彼女に、世界中どこでも歩き回ったが、何処でもいつも空腹だったと話します。

 オルランドがアンジェリカへの愛を歌いながらやって来ます。木の幹に刻みつけられたアンジェリカとメドロの名前(実はアルツィーナのいたずら)を激しい嫉妬で見つめます。オルランドは(大きな剣を振り回して、ここでフィッシャーさんとやオーケストラは演奏しながら剣を避ける。)ユーリラとバスクアーレを脅してアンジェリカの隠れ家を聞き出します。ユーリラとパスクアーレは森の中にいるアンジェリカに逃げるように勧めます。そこにロドモンテが駆けつけます。彼は未だに決闘する相手を一人として見つけることができず、オルランドを探していました。メドーロは安全なところに身を隠します。突然魔法使いが現れ、まずロドモンテを石に変えてしまいます。オルランドが乗り込んでくると、アルツィーナは彼も石に変えてしまいます。恋人達はとりあえず危機を脱しました。

第二幕
 アンジェリカは逃げたメドーロを思い嘆きます。オルランドの姿は昼も夜も絶えず彼女を苦しめました。アルツィーナはその狂気を心配しましたが、オルランドを元に戻します。ロドモンテは偶然オルランドを見つけます。彼らは決闘し、ロドモンテは傷を負います。ユーリラが助けようとしますが、彼は断ります。(止めに入った彼女か剣を離さないので、ロドモンテはかえって重傷を負ってしまう。)彼のような一人の騎士にとって、愛しい人のために戦って死ぬ事は最高の名誉です。

 荒野をさまよいながら、メドーロは逃げたこと後悔していました。ユーリラがオルランドから隠れるように洞穴に案内しますが、彼はまだ迷っています。メドーロはユーリラに、彼がここで死ぬだろうが、いつもまでも愛してほしいアンジェリカに伝えることを頼みます。しかしまたすぐに翻し、何も言わないか、別のことを伝えるように頼むのでした。

 パスクアーレは(昔の音楽家の衣装で登場し、)音楽の才能があることを、ユーリラにアピールします。(彼は指揮をしたり、テノールのように歌います。)彼はユーリラにプロポーズし、彼女は喜んで聞き入れます。すぐさまパスクアーレは彼女の手を取るのでした。

 アンジェリカはメドーロを心配していますが、そのメドーロは思いがけず騎士オルランドに出会い、殺されてしまいます。アルツィーナはアンジェリカをメドーロの元に送り、オルランドの凶行を警告して消えてしまいます。突然海が盛り上がり、そこから出てきた恐ろしい怪物(実は鏡に写った彼自身)は、オルランドを取り囲みます。一方、ユーリラと結婚したパスクアーレは上機嫌です。

 オルランドは強敵魔法使いと戦います。アルツィーナを呼び出すために、彼はパスクアーレを先兵として送りますがうまくいきません。すると突然アルツィーナが現れ、アンジェリカをあきらめるように要求します。オルランドは断りますが、アルツィーナの魔法により意識を失ってしまいます。これを見てパスクアーレは驚いて逃げてしまいます。

第三幕
Finale of Orlando Paradino  オルランドは死の世界に落ちて行きました。冥界の境である忘れ川レトの橋渡しカロンテは、彼を待ち受けていました。アルツィーナはオルランドをレトの水で癒し、生者の世界に送り返すようにカロンテに命令します。オルランドは意識を取り戻し、朦朧としながら記憶をたどりましたが、すでに消え去り、何一つ思い出すことはできませんでした。

 アンジェリカはメドーロの死を悲みますが、アルツィーナが現れて絶望した彼女を慰めます。彼女はアンジェリカに記憶を失ったオルランドを会わせ、メドーロを死から蘇らせます。アンジェリカとメドーロ、ユーリラとパスクアーレの恋人達はアルツィーナ、カロンテと共に喜び、オルランドは一人去っていきます。

写真:最終リハーサルのフィナーレ。左からユーリア、パスクアーレ、アルツィーナ、カロンテ、メドーロ、アンジェリカ。オルランドは一人立ち去る

 

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「オルランド・パラディノ」レビュー ― コミカルな演出と軽快な音楽で大成功!!

 オリジナルの脚本では中世を舞台としていますが、31歳の若手マティアス・ショーンフェルトによる演出は現代風で、とても楽しいオペラでした。開演前には舞台の中央には箱状のシンプルなセットが置かれ、その前に半透明の幕が降りていました。序曲の途中から魔法使いアルツィーナが客席から登場し、開演の準備をします。序曲の終了と同時にアルツイーナがハサミで幕を切って落とす頃には、観客はすでにオペラの世界に引き込まれていました。所々にちりばめられたコミカルな演出と、フィッシャーさんとハイドンフィルハーモニーの素晴らしい音楽で、ストーリーは軽快なテンポで進み、言語の違いにも関わらず、非常に分かりやすく楽しめる作品でした。

 歌手陣もそれぞれに素晴らしく、ソプラノの釜洞祐子はとても美しいコロラトゥーラでアンジェリカの悲しみや愛情を表現しました。これに対してもう一人の日本人ソプラノ金子みゆきは、とてもコミカルな歌と演技でかわいらしいユーリラを演じ、楽しませてくれました。アメリカ人メゾソプラノ、キャサリン・ゴルトナーは、神出鬼没でちょっと悪戯好きな魔法使いアルツィーナでオペラを引き締めました。オルランド役のスコット・ワイアー、ロドモンテ役のディッター・ホーニッヒ、メドーロ役のタマーシュ・ダロツィともに個性的なアリアで観客を魅了しましたが、とりわけパスクアーレ役のアルゼンチン出身のバリトン、ヘルナン・イトゥラールデが、ユーモラスな演技と素晴らしい歌唱で大喝采を誘いました。パスクアーレが音楽の才能をアピールするシーンでは、フィッシャーさんやハイドンフィルも巻き込んで演技するなど大活躍で、いつかは大オペラ座でフィガロを演じさせたいという声も聞かれました。

 オーストリアの若手ケルステン・パウルセンによる衣装はとても美しく、特にアルツィーナの赤いドレスと髪型が印象に残りました。

 今回のオペラはニューヨークのリンカーンセンターで開かれる、モーストリー・モーツアルト・フェスティバルでの上演を交渉中です。これが実現すれば、メトロポリタンオペラを見慣れたニューヨーカーもハイドンのオペラを堪能することと思います。

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フィッシャーさんのコメント

 「オルランド・パラディノ」はイタリア語上演でしたが、この点について、フィッシャーさんに聞いてみました。

「制作開始当初当、演出、歌手サイドともにドイツ語で上演したがっていました。私とハイドンフィルのステージマネージャーのルーディ・モラヴィツだけがイタリア語上演を主張し、ほとんど孤立状態でした。聴衆がオーストリア人なのでイタリア語ではわからないし、予算の関係で字幕をつけるわけにはいかないのが主な理由でしたが、作曲者のハイドン自身がドイツ語で初演したときも成功しなかったので、私としてはイタリア語にしたかったんです。ドイツ語上演とイタリア語上演では根本的に演出が異なり、イタリア語ではドイツ語圏の観客にはわかりにくいレチタチーブを少なくし、音楽が中心になります。その分状況説明が少ないので、わかりやすい演技で表現しています。」

 

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釜洞祐子さん、金子みゆきさんインタビュー

 「オルランド・パラディノ」のアンジェリカ役の釜洞祐子さんとユーリラ役の金子みゆきさんに、フィッシャーさんの印象について聞いてみました。

金子「今回のオペラのリハーサルは4週間でした。たった2回の上演だけなんて、とても残念です。フィッシャーさんはとてもダイナミックな演奏をする方ですね。今回初めてご一緒したのですが、有名な方なので最初は少し恐かったんです。でもとても気さくな人だとわかりました。音楽だけでなく、演技に対するアイディアもたくさん持っていて、ある時など突然自分で演技を初めて、周りはびっくりなんてこともありました。」

釜洞「私はカッセルオペラ時代に一緒に仕事をしました。でもあの頃は新制作のオペラでも、プレミアの直前にならないと現れないかったのですが、今回はとても早い段階から練習につきあってくれました。それだけ大切な仕事なんですね。彼の音楽は非常に情熱的ですね。ハンガリー人の血が騒ぐという感じ。今回もすごく気合いを入れて指揮をしていたので、お客さんに声が聞こえるんじゃないかと心配しました。」

金子みゆきさん(写真上)は長野県出身で、東京音楽大学で学んだ後、ドイツのシュツッツガルト音楽院で著名な先生に師事しました。1991年にはイタリアで開かれたパルマ・ドーロ・リートコンクールで最終選考に残りました。日本ではフィガロの結婚のチェルビーノ役でデビューし、92年のドイツのウルム国立劇場でのヨーロッパ・デビュー以来、ドイツや日本で活躍しています。

 大阪出身の釜洞祐子さん(写真下)は、神戸や東京で学び、1982年に日本音楽コンクールで優勝しました。86年から92年までは、ドイツのカッセル国立劇場と契約し、このときに音楽監督だったフィッシャーさんと一緒に仕事をしました。また、94年には東京ジュリアード協会からオペラ賞を贈られました。若々しい姿からは想像できませんが、8歳のお子さんのお母さんで、カッセルオペラのヴァイオリニストとして活躍中の旦那様と3人でカッセルに住み、日本やドイツでコンサート活動をしています。

 

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ハイドンフィル・コンサート

 今回のインターナショナル・ハイドンターゲでは、フィッシャーさん指揮のハイドンフィルハーモニーとして、2回のコンサートがありました。9月14日にはハイドンの墓のあるベルグ教会で、オラトリオ「トビアの帰還」が演奏されました。これはハイドンの最初のオラトリオで全曲約3時間半にも及ぶ大作ですが、今回はアリアの一部とレチタチーブの大部分を除いた、約2時間の短縮演奏でした。客席が狭く長時間の鑑賞には向かないのが主な理由ですが、フィッシャーさん自身としては最後まで悩んでいました。ベルグ教会は音が聞き取りにくく、またハイドンフィルには小さすぎることもあり、ファンの中にはハイドンザールでの全曲再演を望む声も聞かれました。

 9月17日には音楽祭の最後を飾り、ハイドンの交響曲76番と101番「時計」、およびピアノ協奏曲が演奏されました。ウイーンの若手ピアニスト、バーバラ・モーザーは、第一楽章のミスに動揺し、万全の演奏ができなかったのが残念ですが、2曲の交響曲は素晴らしく、特に76番はとても楽しく明るい、フィッシャーさんならではのハイドンを聞かせてくれました。

 さらに、フェスティバルに先立ってソニーの大賀会長指揮による演奏会が開かれ、フィッシャーさんはトライアングルを、マネージャーのモラヴィッツさんは大太鼓を担当しました。

 

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