|
|
|
モーツァルト週間2003、「コジ・ファン・トゥッテ」新製作
現代的なスタイルで、日常の物語として設定された舞台は、テキストにはかなり忠実ではあるものの、多くのユーモアが含まれています。テーマは題名の通り、「女性みんながやっていること」で、演出家ヘルツォグは姉妹に恋する若い女性の典型的な仕草を、コミカルに演じさせました。最近流行の視聴者参加型番組の形式を取り入れ、まるでコーラスのメンバーや観客が、「姉妹はどのくらい長く誘惑に耐えられるか」という実験を観察する、という演出です。
ロジータ・ケキテ(フィオルデリッジ)とダニエラ・シンドラム(ドラベッラ)は2人とも初めての役柄ですが、息の合った演技で素晴らしい重唱を聞かせてくれました。マーカル・アイヒとヨハネス・クムも存在感のある相手役を務めました。イリス・キュプケは悪戯好きのデスピーナ、普段悪役が多いウィンフリート・サカイがコミカルなドン・アルフォンソを演じました。 そして公演の成功の立役者はやはり、フィッシャーさん指揮のマンハイム国立劇場オーケストラです。フィッシャー流の切れ味の鋭いダイナミックなモーツァルトは、序曲の冒頭から人々を魅了し、モーツァルトが望んだでような演奏との評判でした。演出、歌、伴奏と三拍子揃った名演は、次回の「最優秀オペラ」の有力候補であることは間違いありません。 コンサート・レポートの先頭に戻る
インターナショナル・ハイドンターゲ2003
今年のオペラは古楽器を使った「フィレモンとバウチス」の再演だったので、ハイドンフィルは演奏しませんでしたが、その代わりにハイドンザール3回の公演を行ないました。9月13日の最初のコンサートは、ベートーベンの交響曲7番とハイドンの「軍隊」です。過去に数多く演奏しているハイドンの交響曲に比べると、オーケストラはベートーベンには慣れていません。リハーサルでは所々ミスもあり、各奏者もかなり緊張していましたが、長所を伸ばすフィッシャーさん指揮にのったオーケストラは、本番では見違えるほどのびのびと、迫力あるベートーベンを聞かせてくれました。
二番目のコンサートはハイドンの86番と、ウイーンジングフェラインを迎えたハルモニウムミサでした。ハイドンザールにしては合唱団が大きく、バランスが悪い印象はありましたが、ライモンディ、マグナス、アゼスベルガー、ヤコービッチのソリストらは素晴らしく、音楽祭の芸術面でのハイライトでした。 最終日のマチネーはドラマチックなベートーベンの「運命」でスタートしました。後半のハイドン交響曲104番「ロンドン」は、例えば第4楽章冒頭のチェロの低音を、ホルンで補うなど、フィッシャーさん独自のアイディアに満ちた楽しい演奏でした。 例年通りフィッシャーさんの挨拶のあと、アンコールで恒例の告別交響曲のアダージョを演奏して、音楽祭は閉幕しました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
バイロイトとウイーンのリング・チクルス
出演者は殆んど昨年と同じですが、ローゲがグラハム・クラークからアーノルド・ベツイェンに、ハーゲンがジョン・トムリンソンからピーター・カルベネスに変更されました。その中で今年の殊勲者はウォータンのアラン・タイタスです。昨年とは打って変わった迫力のある歌唱は説得力に富み、最初の三作を成功に導きました。「黄昏」の中心人物ハーゲンが昨年ほどの良くなかったのが残念でした。 ウイーン国立歌劇場の今年唯一のリング・チクルスは、デボラ・ボラスキをブリュンヒルデに迎え、エヴィリン・ヘルリツィウスがジークリンデ、藤村実穂子がワルキューレでフリッカを歌いました。若いヘルリツィウスに比べると、ボラスキは安定した歌唱で音楽的には説得力がありますが、演技は控えめで、印象には残りませんでした。その他は、アメリカ人テナー、クリストファー・ヴェントリスが初のジークムント役を成功させ、マンハイムでもお馴染みの、ダニエラ・デンシュラーグがエルダを好演しました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ウイーン国立歌劇場「アンドレア・シェニエ」
「アンドレア・シェニエ」はフランス革命の頃に実在した革命家の詩人を題材にしたもので、シェニエと貴族の娘マッダレーナの愛と、それを邪魔する元召使で革命の英雄ジェラルドの物語です。ストーリーはプッチーニの「トスカ」に似ていますが、こちらの方が先に上演され、作曲者自身がプッチーニを非難したという記録も残っています。 このオペラはなんと言っても主役三人の出来にかかっている部分が多く、三人の内の二人が役に初挑戦ということで、フィッシャーさん自身も少し心配していました。しかし劇的なアリアの後にはブラボー・コールや盛大な拍手で、公演が中断するほど好評でした。圧巻は4幕最後の愛の二重唱で、手を取りながらギロチン台に向かっていく劇的なフィナーレは涙を誘いました。動きが少なく歌で勝負したボータとウルマーナに対し、ジェラルド役のアタネリは活発で、活動的な革命の英雄を好演していました。その美しいアリアと相まって、今回の上演では最も印象に残りました。 伝統的な演出で知られるウイーン国立歌劇場のリバイバル公演として、豪華な衣裳や18世紀のパリを思わせるステージセットなど、オペラの殿堂に相応しい演出でした。しかしながら大規模なセットが災いし、舞台転換のために第一幕の後と第三幕の後に2回の休憩を入れ、第二幕の後は5分以上の間合いがとられました。各幕の上演時間が30分程度と短い割には休憩時間が長くなり、結果として聴衆の集中力を削ぐ結果となったのは残念でした。 次回のフィッシャーさんのウイーン国立歌劇場への登場は、9月から10月にかけての「ニーベルングの指輪」の予定です。 コンサート・レポートの先頭に戻る
チューリッヒとミュンヘン、二つの「魔笛」
チューリッヒオペラの「魔笛」はジョナサン・ミラーの演出。比較的伝統的な演出ながら、冒頭に蛇を持ったトッブレスの女性が登場してでタミーノを誘惑するなど、斬新な部分も見られました。歌手陣は皆好調でしたが、とりわけ素晴らしかったのは、パパゲーノ役のアントン・シャリンガーです。第二幕の神官や老女(パパゲーナ)との漫才のようなやり取りや、1リットルのワインを一気飲みしながら歌うアリアなど、歌のみならずコミカルな演技で爆笑を誘っていました。一幕の登場シーンでは、フィッシャーさんが吹いた笛を褒め称えるなど、余裕たっぷりで登場人物の中心として大活躍でした。
好調な歌手の中ではとりわけ夜の女王を歌ったディアナ・ダムラウが冴え、オペラ全作品の中でも最も音が高く困難である2幕のアリアも楽々と歌うほどの、素晴らしいコロラトゥーラで大きなブラボーコールを受けていました。また、全曲を通してパミーナ役のアガ・ミコライは美しい歌声で魅了しました。逆にチューリッヒの演出では中心だったパパゲーノが意外におとなしく、演出コンセプトの重要性を再認識しました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ハイドンフィル・ウイーン楽友協会演奏会ハイドンフィルはここ数年、毎年春にウイーンのコンツェルトハウスで公演していますが、今年は楽友協会大ホールに初めて登場しました。 コンサートはフィッシャーさんのお気に入り、ハイドンの交響曲88番でスタートしました。要所要所にフィッシャー流の楽譜には無い独特のアクセントを取り入れ、ある時はコミカルな、ある時にダイナミックな、演奏に聴衆は大喜びでした。 次は、ソリストにウイーン国立歌劇場などでも活躍しているボー・スコフスを迎えた、マーラーの「さまよう若者の歌」です。この曲ではスコフスの、ドラマチックで細部にまで神経が行き届いた素晴らしい歌唱が印象に残りました。 休憩の後はハイドンのロンドンセットの中から交響曲101番「時計」。こちらも独特なアクセントを多用した、楽しい演奏ですが、第2楽章は正確に時計のリズムを刻むなど、88番に比べると、伝統的な演奏に近いものでした。 アンコールは定番、「フィガロの結婚」序曲で、軽やかな楽しいモーツァルトで演奏会を締めくくりました。 耳の肥えたウイーンの聴衆は大喝采で、普段は厳しい地元の新聞も、「クラシックの演奏会の中でも最高に楽しいコンサート」(Kronen Zeitung)「ユーモアを理解したハイドンのスピリットを復活させた演奏」(Die Presse)などと、手放しで称賛していました。また、この演奏会の模様は、オーストリアのラジオ局ORF1により、生中継されました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
マンハイム・「ボリス・ゴドノフ」新製作
オペラ経験の豊富なフィッシャーさんですが、ドイツ物やイタリア物が中心で、「ボリス・ゴドノフ」は少年時代に児童合唱の一人として出演して以来、指揮は初めてでした。今回はフランスのオペラ・リヨンとの共同制作で、リヨンの音楽監督のイヴァン・フィッシャーさんと初の兄弟競演ということで、ニューヨーク・タイムズにも取り上げられました。 上演時間は4時間以上、20人近いソリストと多数の合唱団を必要とする大作は、過去マンハイムではあまり上演されていません。共同制作ということで、ステージも大規模で迫力のあるプレミア公演は、カーテンコールが何度も続く大成功となりました。 演出はマンハイムの「青髭公の城」や昨年のハイドンターゲで「ラ・ヴェラ・コスタンザ」を担当したフィリップ・ヒンメルマンで、舞台中央の巨大な階段を巧みに利用し、ロシアの王宮や修道院の情景を作り上げていました。場面転換では上下と左右に開く幕を同時に使い、聴衆の関心を舞台の中央に集中させるなど、細かい演出も工夫されていました。 数多いソリストの中でも最も印象的だったのは、タイトルロールを歌ったミハーイ・ミハイロルです。特にボリスの死の場面は圧巻で、説得力ある歌と演技でボリスの苦悩を表現しました。また、ワーグナーの作品ではアルベリヒやクリングゾルなどの悪役で定評のあるウィンフィールド・サカイの演じる、托鉢僧ワールラムも上出来でした。さらに、マティアス・ヴォールブレヒトは、人形を抱えた迫真の演技で、ロシアの人民の嘆きを予言する聖愚者演じました。 この作品の影の主役は、虐げられたロシアの市民を演じるマンハイム国立劇場合唱団です。冒頭のボリスの戴冠を望む合唱や、第4幕のディミトリを支持する場面では、圧倒的な迫力で、終演後は特に大きな喝采を受けていました。 マンハイムでは5月以降にも何回か「ボリス・ゴドノフ」の上演が予定されていますが、残念ながらフィッシャーさんが指揮するとは限りません。 コンサート・レポートの先頭に戻る |
|
Content © 1996 -
2008 Adam Fischer & Haydn Orchestra Fan Club
|