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チューリッヒオペラ「イル・トロバトーレ」
最近フィッシャーさんは、ワーグナーの作品や「フィデリオ」などのドイツ物が中心ですが、1980年代にはウイーン国立歌劇場でイタリア物をたくさん指揮しています。実はこの「イル・トロバトーレ」は、フィッシャーさんがプロとして指揮した最初の作品です。それはフィンランド国立オペラで、彼はまだ20代の後半でした。 伝説のテノール、マリオ・デルモナコの息子ジャンカルロ・デルモナコによる演出は、ドイツの歌劇場に比べるとオーソドックスでしたが、物語の核になるものが不足していました。幕が開くと中世の兵士たちが霧の中に立っているのに、次のシーンでは男爵とレオノーレは赤いドレスとトレンチコートで登場します。ジプシーたちはモダンな建物に住んでいたり、ルナ男爵が日本の剣道を学んでいたり、シーンは美しいものの、アイディアが最後まで統一されていませんでした。 それに反して音楽面は素晴らしい出来でした。レオ・ヌッチの男爵とマルチェロ・アルバレスのマンリコのアリアの共演はショー・ストッパーで、嵐のような喝采が長く続きました。女声陣ではルチアーナ・ディンティーノが説得力のあるアズチーナを好演した反面、レオノーラ役のクリスチーナ・ガルランド・ドマスは美しいものの、存在感は及びませんでした。フィッシャーさん指揮のチューリッヒオペラ・オーケストラも、歌を引きたてる好演でした。 フィッシャーさんのもう一つの新製作は、チェチリアバルトリ主演の「クラリ」が5月末にあります コンサート・レポートの先頭に戻る
バンベルグ交響楽団演奏会
フィッシャーさんは88番は多くの楽団と共演して、ハイドンフィルのドイツツアーでも演奏しました。ドイツの重厚なオーケストラであるバンベルグ響はは、オーストリアの田舎風の強いアクセントは苦手ですが、精一杯の力演で、ハイドンのユーモアを表現し、フィッシャーさんもお客さんも大満足でした。 ドボルザークの8番はチェコのドイツ人楽団のルーツを反映して、オーケストラの得意の演目です。フィッシャーさんとの共演も回数を重ね、演奏スタイルも発展してきました。比較的ゆっくりとしたテンポでフィッシャーさんはボヘミアの風景を描き、オーケストラは熱狂的に反応していました。とても素晴らしい公演で、楽員さえも楽しみながら演奏していました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ハイドンターゲ07とその他のハイドンフィル公演
今年もフィッシャーさんにとっては、相変わらず忙しい夏でした。今シーズンで終了するシュリンゲンジーフ演出の「パルジファル」を指揮した直後には、ハイドンフィルとのオラトリオ「四季」のリハーサルが始まりました。アイゼンシュタットの前にハイドンフィルは、北ドイツのシュレスヴィヒ・ホルスタイン音楽祭に登場し、ダイナミックなハイドンとモーツアルトで聴衆を驚かせました。 ハイドンターゲ2007は9月6日の「四季」でスタートしました。前回この曲を演奏した2001年とは変わって、フィッシャーさんは新しいアイディアを多用した解釈で、冒頭の厳しい冬の表現など、アイゼンシュタットの四季を生き生きと描き出しました。ソリストのジュリアネ・バンセ、マーカス・シェーファー、フローリアン、ボッシュも超一級の歌唱で、この公演は音楽祭前半のハイライトとなりました。 アダム・フィッシャー抜きでもハイドンフィルは「ハイドンとロマン派」を表現する実力があります。指揮者マッケラスが病気で9月12日のハノーバー・バンドの演奏会がキャンセルされたため、ハイドンフィルはクリストファー・ホグウッドを招いて、その演奏会を引き継ぎました。プログラムはメンデルスゾーンの「イタリア」、ハイドンフィルのクラリネット奏者、ウォルフガング・クリンザーによるウエーバーのクラリネット協奏曲、さにらハイドンの「太鼓連打」です。 ハイドン解釈で有名なホグウッドは、ハイドンフィルを信頼した指揮ぶりでした。基本から作り上げるのではなく、フィッシャー色を抜き、ホグウッド風味をつける程度で、ハイドンフィルの持つ力を発揮させることを重視していました。 むしろホグウッドは「イタリア」に焦点を当てていました。この曲は作曲者が大幅に改変しましたが、完成する前に他界したため、改訂版は日の目を観ることはありませんでした。最近の研究の成果で、2から4楽章が大幅に修正された版が出版されたため、音楽学者ホグウッドはこの版を取り上げました。有名な曲の大幅な変更で、リハーサルではハイドンフィルも悪戦苦闘でしたが、コンサートでは大成功。ホグウッドの速いテンポに必死について行きました。 素晴らしい演奏に応え、聴衆はホグウッドとオーケストラに大喝采を送りました。オーケストラ自身もホグウッドを気に入り、次回の客演が期待されます。 その2日後にはフィッシャーさんが「新世界と旧世界より」というタイトルの付いた演奏会で、ハイドンフィルの指揮台に戻ってきました。プログラムの前半は有名なロマン派の曲、ドボルザークの「新世界より」です。ハイドンの交響曲に比べると、木管や金管がより重視していて、第2楽章では有名なコールアングレのソロ以外にも、木管の美しい響きが印象的でした。また、第4楽章の冒頭では、マーラーのように4本のホルンを立たせる演出もありました。 後半はウイーン室内合唱団とハイドンの「ハイリゲミサ」です。オーケストラは小さなサイズに縮小され、前半にとは対照的に弦楽器が中心でした。フィッシャーさんの活発なテンポは合唱団は大変そうでしたが、見事なアンサンブルを聞かせてくれました。 例年通り、日曜日のマチネーは音楽祭の締めくくりです。フィッシャーさんとハイドンフィルは、「ハイドンとロマン派」のテーマに従い、ハイドンとチャイコフスキーを取り上げました。前半はハイドンの交響曲15番とチャイコフスキーのロココ変奏曲です。残念ながらソリストのクレメンス・ハーゲンがキャンセルしましたが、ウイーン響のソロ・チェリストのクリストフ・ストラドナーが素晴らしい技巧を披露しました。 後半のハイドンの交響曲97番は、フィッシャーさんのお得意の曲で、去年も録音しています。各楽章は時にユーモラス時に活発なフィッシャースタイルで、満員の聴衆は楽しい音楽祭の雰囲気を満喫しました。例年通りフィッシャーさんの挨拶に続いて、オーケストラが「告別」交響曲を演奏し、音楽祭は終幕しました。 その1週間後には、フィッシャーさんとハイドンフィルはグラーツのステファニエンザールに登場しました。グラーツ音楽協会の定期演奏会のシーズン開幕演奏会で、モーツァルトの「プラハ」とハイドンの97番を演奏し、忙しい音楽祭シーズンは終了しました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
シュヴェッツィンゲンのマンハイム・モーツァルトゾマー
フィッシャーさんのマンハイムとの契約は2005年に満了しましたが、GMD在任中には、毎年12月にモーツァルト週間を行っていました。今年マンハイム国立劇場はこの音楽祭を近郊のシュヴェッツィンゲンの城に移して、7月に開催しました。 この城はモーツァルト自身も訪ねた場所で、場内のロココ劇場はシュヴェッツィンゲン音楽祭の会場ともなっています。今回マンハイム国立劇場は、この劇場で上演するためにモーツァルトの初期のオペラ「ルチオ・シッラ」を制作しました。 演出家のギュンター・クラマーは、ローマ帝国時代の話を現代の政治劇に仕立て上げました。冒頭でルチオ・シッラはクーデターを実行し、政権を掌握します。旧政権の生き残りのチェチリオとルチオ・チンナはシッラの暗殺を企てますが、失敗に終わります。しかし最後にはシッラが全てを許します。 全ての登場人物が歌と演技で性格を表現し、説得力のある公園は大好評。とりわけコーネリア・プトシェクの美しいピアニッシモとスタッカートと、男性ソプラノのヤチェク・ラスツコウスキーのアリアは大喝采を受けました。 マンハイム国立劇場オーケストラは、生き生きとした演奏で公演を盛り上げ、2時間近い前半も長さを感じさせませんでした。公演地元の新聞は、「アダム・フィッシャーはマンハイムのオーケストラを、一流のモーツァルト・アンサンブルに作り上げた証拠だ」と賞賛を惜しみませんでした。 この「ルチオ・シッラ」は、来年7月のマンハイム・モーツァルトゾマー2008でも上演される予定です。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ブダペスト・ワーグナーの日2007
昨年の「パルジファル」の大成功に続いて、ブダペスト・ワーグナーの日2007は6月7日から10日まで、ブダペストの芸術宮殿で開催されました。今年は「ニーベルングの指環」の前半2作で、1億6千万フォリント(約1億円)の制作費をかけた、芸術宮殿最大のプロジェクトとなりました。 今回の公演は昨年の「パルジファル」のように、歌手はコンサート用の衣装ですが、通常のオペラのように演技をします。今年はそれに加えて、背景に大きな液晶ディスプレイを設置し、ここに美しく効果的な背景を表示します。 冒頭は暗闇から始まり、ディスプレイにはライン河で泳ぐラインの乙女たちが現れます。映像は音楽と連動し、歌手はその前で演技し、時には透明のパネルの後ろで歌います。 巨人は巨大な人形の頭と手で、争う場面ではファフナーの拳がファズロットの頭に飛び、合わせて画面に血が飛び散る、リアルな演出でした。 演出だけでなく、音楽ももちろん超一級です。歌手の中ではクリスチャン・フランツが最も印象的でした。彼のローゲは複雑なキャラクターを持ち、ジークフリートはロマンティクな悲劇のヒーローを歌い上げました。ミカエラ・シュスターのジークリンデとのデュエットは、この公演のハイライトでした。ベテランのジェームス・ジョンソンは気品のある「ラインの黄金」のウォータンを歌い、ハンガリーのメゾ、ユディット・ネメートが説得力あるフリッカを通して歌いました。 「ワルキューレ」ではパワーがあるリンダ・ワトソンがドラマチックなブリュンヒルデを好演。特に素晴らしいのはフンディングのワルター・フィンクです。響き渡る大きな声はとても恐ろしく、ダンサーの演じる犬を引き連れて舞台に立つと、芸術宮殿はフンディングの家と化しました。 今回は共演のキャラクターもハイレベルでした。オラフ・ベーアはバイロイト同様、表現力あるドナーを演じ、ハンナ・シュヴァルツはミステリアスなエルダ歌いました。中でもハンガリーの若手テノール、アッティラ・フェケテはベテランに負けない存在感で、素晴らしいフローを演じました。 フィッシャーさん指揮のハンガリー放送響はもちろんこの公演の中心です。歌手に優しい指揮の下、出演者は全て実力を発揮し、オーケストラはワーグナーの情念を力強く表現しました。 来年はいよいよ4日間でサイクルを完了する計画です。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ハイドンフィル、創立20周年を祝う
ウイーンとブダペストからトップレベルの奏者がアイゼンシュタットに集い、若き指揮者アダム・フィッシャーの元で最初の演奏会を開いたのが1987年5月27日のことです。その20年後、今年の5月27日には、ハイドンが「告別交響曲」を初演したフェルトードのエステルハーツィー城で、ハイドンフィルは200周年を祝いました。 記念コンサートのプログラムはまずハイドンの交響曲49番で始まり、2年前にアイゼンシュタットの「哲学者の魂」でエウリディーチェを歌ったラファエラ・ミラネシをソロに迎えて、ハイドンのカンタータ「ベレニチェ・チェファイ」とヘンデルの「アリオダンテ」からアリア、さらにハイドン交響曲88番でした。 エステルハーザはハイドンザールのような大きなホールが無いので、オーケストラは城の一番大きな部屋で演奏し、お客さんは二つ部屋に分かれて鑑賞しました。その間には壁があるため、三つの扉を全開しても後方の客さんは音が小さく、視覚も良くありません。しかしながら集まったお客さんはアットホームな雰囲気を楽しんでいました。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ハイドンフィルのドイツ・ツアーと20周年記念公演
1987年当時、オーストリアと共産主義国ハンガリーの国境は開かれてはいませんでした。鉄のカーテンの隙間を使うようにして、最高のハイドンをアイゼンシュタットのハイドンザールで演奏することを目的に、アダム・フィッシャーはオーケストラを設立しました。この楽団にはハイドンの当時のように、両国を代表する音楽家を集めなければなりません。長い年月をかけとハイドンの交響曲全集の録音を完了し、20年後には国際的にも知られる団体に成長しました。そして創立20周年を祝う直前に、ハイドンフィルは首都ベルリンを含む6都市を訪ねるドイツ・ツアーを行いました。 4月20日のベルリンフィルハーモニー室内楽ホールでの演奏会は、1曲目はハイドンの交響曲第88番です。これはフィッシャーさんお得意の作品で、過去には4回も録音しています。弦楽器の強いアクセントにより生き生きとした楽しい演奏は、ベルリン・スタイルとは全く異なったハイドンでした。1曲目が終わった段階で、既に聴衆は大喜びです。
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カメラータ・ザルツブルグへの客演フィッシャーさんはオーストリア国内ではコンサート指揮者としても人気が高く、モーツァルト演奏は最も素晴らしいと評判です。そこでハイドンフィルと同サイズの室内オーケストラ、カメラータ・ザルツブルグも重要な演奏会の客演指揮者として招聘し、ザルツブルグ・モーツァルト週間のオープニングコンサートに続いて、3月末にはウイーンのコンツェルトハウスで共に舞台に立ちました。 プログラムは全曲モーツァルトです。前半はオペラ「イドメネオ」のバレエ音楽と、バリトンのための3つのアリアです。本来トーマス・クァストホフがソロを務める予定でしたが、キャンセルのためニュージーランド・サモア出身のバリトン、ジョナサン・レマルーが代役に立ちました。 後半はモーツァルトの交響曲38番「プラハ」です。フィッシャーさんのテンポはとても速く軽快です。しかしながら最終楽章ではこのテンポは難しく、ソロのフルートがフレーズ冒頭の休符を正確に守れないと、アンサンブル全体がつられて慌しくなってしまいます。今回のカメラータ・ザルツブルグは若干の乱れはあったものの、しっかりした演奏でした。 確かに普段のフィッシャーさんのモーツァルトとは少し異なりましたが、ウイーンの聴衆は暖かい拍手を送りました。それに応えてオーケストラは「フィガロの結婚」序曲を演奏しましたが、ハイドンフィルほどのダイナミックさありませんでした。 一般的に言ってコンツェルトハウスの大ホールはこのサイズの楽団には大きすぎ、後ろの席からは細かい工夫が良く聞こえないのが残念でした。 コンサート・レポートの先頭に戻る
ブダペストのマーラー交響曲第8番
ハイドン同様、マーラーもフィッシャーさんの重要なレパートリーですが、この2月にはブダペストでマーラーの交響曲第8番の演奏会がありました。「千人の交響曲」の名が示すように、この曲はフルサイズのオーケストラ(ハンガリー放送響)、二つの合唱団(放送合唱団、国立合唱団、デブレッツェン・コダーイ合唱団)、児童合唱団(放送児童合唱団)に8人のソリスト(アンナ・コロンディ、ベアトリクス・フォドル、エヴァ・バトリ、イルディコ・チェルナ、ベナッデッド・ヴィーダーマン、ヤーノシュ・バンディ、ヴィクトール・マーシャニ、イシュトバーン・コヴァーチュ)を要します。フィッシャーさんは多数の演奏者を常にコントロールしていました。 第一部は合唱団が中心でした。約400人の合唱は力強く劇的です。人間の声のパワーは劇場をも震撼させました。 第二部はオーケストラとソリストが中心です。冒頭のフィッシャーさん特有の緊張感あふれる弱音には、満員の聴衆も息を呑むほどでした。舞台には7人しかソリストがいませんでしたが、第2部の後半から第3のソプラノ、エヴァ・バトリがバルコニーに登場し、栄光の聖母を歌い上げました。終演後は嵐のような喝采が長く続きました。 コンサート・レポートの先頭に戻る |
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